スズキのオフロードバイクの歴史

1960年代 ハスラーTS250の誕生
1969年、スズキは国内メーカーとしていち早くモトクロス世界選手権に挑戦して得た技術を市販車へ落とし込み、本格オフロードモデル「ハスラーTS250」を発売しました。2ストローク単気筒エンジンとアップマフラー、19/18インチのブロックタイヤを備え、当時はまだ珍しかった「オフロード専用装備」を量産車に採用したことが大きな話題となります。仮面ライダーの劇中車としても知られ、オフロードの楽しさを一般ライダーへ広く伝えました。
1980〜1990年代 DRシリーズで4スト化と熟成
1982年には4ストローク250ccデュアルパーパスのDR250Sが登場し、フルフローターサスや4バルブSOHCエンジンなど革新的な機構で注目を集めます。1990年の2代目DR250S、1995年のDR250Rへとモデルチェンジを重ねる中で車体は軽量化され、倒立フォークや油冷エンジンを採用するなど信頼性と耐久性も向上。派生モデルとしてロングタンク仕様のDJEBELや輸出用のDR-Z250も生まれ、スズキのトレールラインアップが一気に厚みを増しました。
2000年代 中排気量化とDR-Z400Sの登場
2000年には398cc水冷DOHC単気筒を搭載したDR-Z400Sがデビューします。当時国内では珍しかった400ccクラスの公道オフロード車で、40馬力の高出力と調整式サスペンション、アルミ部品の積極採用による軽量化が特徴でした。競技用DR-Z400をベースに保安部品を備えた公道仕様という位置づけで、オフロードファンの行動半径を大きく広げ、2009年モデルまで生産が続きました。
2020年代 電子制御を得た新世代DR-Z4S/DR-Z4SM
排出ガス規制の強化と多様なライディングシーンに応えるため、スズキは2024年のEICMAで新型DR-Z4S(デュアルパーパス)とDR-Z4SM(スーパーモト)を発表しました。排気量は引き続き約400ccながら完全新設計の水冷単気筒を採用し、ライドモード切り替えやトラクションコントロール、ABSリアキャンセル機能などを統合した電子制御パッケージ「S.I.R.S.」を装備。LED灯火類と多機能メーターも標準化され、初期のTS250が切り開いた「どこでも走る楽しさ」が半世紀を経てハイテクと共に再定義されました。
ハスラーTS250が示した「未舗装路をもっと自由に走りたい」という思いは、DRシリーズの4スト化と排気量アップを経て、現代のDR-Z4S/4SMで電子制御という新たな武器を手にしました。時代ごとに環境性能やユーザー層は変わっても、軽快さと走破性を両立させるスズキの開発姿勢は変わりません。今後も技術と遊び心の両面から、オフロードバイクの可能性を広げるモデルの登場が期待されます。